2012年4月7日土曜日

松風:明石の君と入道の別れの歌

松風の帖には、冒頭で、明石上が、光源氏の待つ都に向かうため、母である尼君とともに明石を離れるシーンがある。

その際に、明石に残る父の入道と交わした和歌が、家族の別れの悲しさをよく表している。

(入道)行き先をはるかに祈る別れ路に堪えぬは老いの涙なりけり

(尼君)もろともに都は出できこのたびやひとり野中の道にまどはむ

(明石上)いきて又あひ見むことをいつとてか限りも知らぬ世をば頼まむ

いずれも、何の技巧もない、実に素直な気持ちを表現した歌だ。

源氏物語の作者は、その場面に応じて、またその登場人物の気持ちや立場に応じて、様々なパターンの歌を作ることができたのだ。

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