松風の帖には、冒頭で、明石上が、光源氏の待つ都に向かうため、母である尼君とともに明石を離れるシーンがある。
その際に、明石に残る父の入道と交わした和歌が、家族の別れの悲しさをよく表している。
(入道)行き先をはるかに祈る別れ路に堪えぬは老いの涙なりけり
(尼君)もろともに都は出できこのたびやひとり野中の道にまどはむ
(明石上)いきて又あひ見むことをいつとてか限りも知らぬ世をば頼まむ
いずれも、何の技巧もない、実に素直な気持ちを表現した歌だ。
源氏物語の作者は、その場面に応じて、またその登場人物の気持ちや立場に応じて、様々なパターンの歌を作ることができたのだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿